北海道斜里町の英語教室

第六回 名詞の使い方2

名詞の話の続きです。

名詞には、数えられるものと数えられないものがある。OK ですか? 数えられるものは、その前に“a”という単語がくることによって、ひとつの、はっきりとしたイメージになる、ということでしたね。逆に、“a”がないと、数えられない、キマった形のないものになってしまう。これはモノによっては怖いですね~。数えられる名詞をハダカで使っちゃダメよ。

“a dog”は、一匹の犬ですね。犬が二匹以上だったら? そう、“dogs”ですね。じゃ、“milk”は? キマッた形がないから、ハダカのままで OK でしたね。

さて、“a dog”は、世の中に犬はドバーッといるけど、そのうちの一匹の犬、ということをあらわしています。どの犬かってのは、べつにかまってません。だから、ヤマダさんちのポチも“a dog”だし、タカハシさんちのジョンも“a dog”だし、キムラさんちのタマゾーも“a dog”なワケね。え? ヤマダさんって、ダレって? 私も知りませ~ん。はは。ま、とにかく、なんでもいいから「犬」が一匹ってのは、“a dog”だってことさ。

ところが! はい、そこのキミ、ひかないように。え~と、ところが、話の展開によっては、「犬といえば、これっきゃない!」って場合もあるんだよね。他の犬じゃなくて、この犬!って場合が。

「これっきゃない」? なんのことでしょう?

たとえば、こんな話。

「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました」

このお話の中で、「おじいさん」と「おばあさん」は聞いている人にとっては初登場ですね。ともかく、誰ってことはないけど、ひとりの「おじいさん」と「おばあさん」のイメージが頭の中に浮かびますね。これが、「a の状態」。それぞれ、「a おじいさん」「a おばあさん」です。

「おじいさんは山へシバ刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました」

はい、この「おじいさん」って、どのおじいさん? もう「誰ってことはないけどおじいさん」、じゃないよね。今、話に出てきた、むかしむかしあるところにいた「そのおじいさん」……これっきゃないでしょ? 他のおじいさんじゃダメだよね。そう、この時点で、むかしむかしのおじいさんは、ただのおじいさんではなく、「スペシャルおじいさん」になってしまったのです。すごいですね~。おばあさんも同様ですね。

このように、話の流れなどで、「これっきゃないおじいさん」、「これっきゃないおばあさん」になった場合は、英語の世界では、“a”ではなく、“the”の状態になるんです。ここは、それぞれ、「the おじいさん」「the おばあさん」になります。

そんなわけで、話に出てくる人やもの(つまり名詞ね)が、聞いている人や読んでいる人に「これっきゃない」とわかるときに、“the”が登場するわけです。いいですか、話を聞いている人や読んでいる人が、「あ、アレね」とわかるモノ、これがポイントです。この“the”という単語は、日本語の「その」に似ていますが、日本語では、上の例のようにいちいちつけないことが多いし、徹底してはいないですね。

じゃ、“the”のイメージを固めるために、もう少し例を見ていきましょう。

「ドアをあけろ!」と言ったときに、“the door”だったら、「これっきゃないドア」ってことになりますね。つまり、あけるべきドアがひとつしかないか、ひとつじゃなくても、「あけろ」といってる人がドアをひとつ指さしていれば、それが、これっきゃない“the door”になります。“a door”だったら、ドアがふたつ以上あって、そのうちの「どれってことはないけどひとつ」のドアをあけろ、ということです。まあ、あんまりないよね、こういう状況は。

“You are a girl.”は、「あなたは女の子です」という意味ですね。“a girl”は、「数ある女の子のうちのひとり」ってこと。これは、たとえば、「え? 男子トイレに入りたいって?ダメだよ~。キミは女の子なんだから」といった状況で使えますね。

じゃ、“You are the girl.”だったら……。あなたは、これっきゃない、スペシャルな女の子になります。トイレ話で言うと、「男子トイレに入りたいってウワサの女の子がいるが……キミがその女の子だね」なんてね。あるいは、ある男の子に交際を申し込まれて、“You are the girl.”と言われたら、「ボクにはキミしかいないんだ」というニュアンスにもなります。わかるかな?

さて、毎度おなじみの「ボクはお化けを見た」ですが、“a ghost”だったら、お化けが一体で、“ghosts”だったら二体以上でしたね。“the ghost”だったらどんな感じ? 話をしているボクちゃんだけじゃなくて、その話を聞いている人も知っている、「これっきゃない」お化け。実際にその人も見たことがあったり、前に話題になったり、そのあたりではすっかり有名になってたりしている、例の、あのお化けってことですね。“the ghosts”だったら、おなじみの二体以上のアノお化けたち、ってことだぞ~。

もうひとつ行こう。「ポチは机の上にいます」。この、「机」について考えてみて。
“a desk”か、“the desk”か。

はい、“the desk”というと、相手にもわかってる「これっきゃない」机ですね。「ああ、あの机の上ね」と特定できる場合です。“a desk”というと、相手にはどれとは特定できないけど、とにかくひとつの机、あるいは、机がふたつ以上あってそのうちのひとつ、ということですね。

というように、日本人にとっては、面倒といえば面倒な“a”と“the”の使い分けですが、話を聞いている相手には親切な表現方法だともいえますね。

あ、それから、“the”以外に、名詞をスペシャル化するものには、「私の犬」とか「あなたの本」とかいうように「だれだれの」という言い方もありますね。my(私の)、your(あなたの)、his(彼の)、her(彼女の)、our(私たちの)、their(彼らの)は、しっかり覚えてください。で、たとえば、a dog、the dog、my dog は、それぞれ違う内容をあらわしますから、“a my dog”のような言い方はダメ、ってことはもうわかりますね。注意しましょう。